茄子接木手順秘伝書其之二 茄子之巻

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茄子之巻では、ナスの割接ぎについて説明します


ナス割接ぎ手順
1,
接木前の台木
2, 接木前の穂木
3, 台木の芯
4, 穂木の芯
5, 掘り起こした台木
6, 穂木と台木
7, 台木の子葉を落とす
8, 台木をカット
9, 台木を切り込む
10, 穂木をカット
11, 穂木を整形
12, 穂木を削る
13, 台木に挿す
14, クリップで固定
15, 固定後の姿
16, 鉢に移植
17, 遮光


能書き
 この資料は、接ぎ木の手順を知らない人のために作成した物です。 専門にやってる人には物足りないでしょうが、教育用資料という事でご承知おきください。

 今回の接木には、穂木に「千両2号」、台木に「あかなす」を用いて、割接ぎを行います。  割接では穂木の根を使わないので、呼び接ぎよりも難易度は高くなります。 しかし、難易度が高いのは接木の技術というよりも、接木後の管理技術の方でしょう。 ここでは接木について解説していますが、接木後の管理はかなりシビアです。
 千両2号はナスの定番(^^; あかなす(赤茄子)は半枯病抵抗性で青枯病にも強い。半身萎凋病には弱いので、には、半身萎凋病対策にはトルバム台木に接ぐ必要がある。
 穂木は2/20、台木は2/13まきで、接ぎ木は3/27〜でした。台木はともかく、穂木が若干細く、例によって、理想的な状態ではない事を断っておきます。 この手の品種ですと穂木は5日ほど遅蒔きする良さそうです。

 用意する物はたくさんありますが、遮光資材と保温資材カミソリ・接ぎ木クリップは必要でしょう。 育苗床には電熱線を入れて、地温20℃にしています。


1,接木前の台木

 接ぎ木前の台木の様子。 台木は播種後50日頃で本葉が5〜6枚になったら接ぎ木適期。

 ポリの育苗バットに8筋に筋まきしてます。 一粒まきすると邪魔くさいので、催芽した種子を育苗土と混ぜ、筋を付けた上にまいています。 播種密度はいい加減でかなり播種密度は高くなってます。

接木手順  次の手順


2,接木前の穂木

 接ぎ木前の穂木の様子。 穂木は台木の播種後7日目にまいています。 台木と同じように、やはりポリの育苗バットに8筋に筋まきしてます。 ホワイトラベルには千両となっていますが、まいてあるのは千両2号です。

接木手順  次の手順


3,台木の芯

 トゲトゲが痛そうですねー。 接木後もこの葉が結構出てきます。 台木の葉なので取るようにして下さい。  これをほおっておくと、アカナスの実がなって

「ナスにトマトができたっ!」

と地方紙を賑やかす事になります。

接木手順  次の手順


4,穂木の芯

 穂木の芯は特に解説要らないですね。 穂木も台木も、接木の前日くらいには少し水を絞っておいて、接木前に少し潅水しておきます。 こうすると活着が良いようですが、実際に確かめたわけではないです。 確かに、少し絞って育苗した方が、接ぎやすいのは確かです。

接木手順  次の手順


5,掘り起こした台木

 掘り起こした台木です。 台木はこの後に接ぎ木して鉢に移植するので、なるべく根を傷めないように起こします。

接木手順  次の手順


6,穂木と台木

 二つ並べると、違いが結構見えてきます。 左が台木のアカナスで、右が穂木の千両2号です。 穂木は若干徒長しています。

接木手順  次の手順


7,台木の子葉を落とす

 アカナス台木の子葉を切り落とします。 残しておいても、育苗中に結構枯れて落ちてしまいます。 子葉も1枚だけ残すと苗質が良くなるという話があったので、ここでは1枚残しています。

接木手順  次の手順


8, 台木をカット

 台木の健全な本葉1枚を残して、台木の先をカットします。 後で切り込みを入れますので、少し長さに余裕があった方が作業はやりやすくなります。  カミソリはフェザーの両刃カミソリを半分にして使用しています。  接木に関する常識ですが、接木に使うには常に切れ味の良い刃を使わないと、作業性や活着率が大きく変わります。 使いかけや、古い刃は使わないようにしてください。  葉を紙で巻いているのは、単に作業者(学生)の好みです。

接木手順  次の手順


9, 台木を切り込む

 台木の軸を切り込みます。この切り口に穂木を挿すわけです。 台木を割って接ぐので「割接ぎ」というわけです。  画像では刃の半分くらい切り込んでいますが、刃幅の2/3程度まで切り込んだ方が接木はしやすいです。  切り込みは茎の中心を通して軸方向に入れます。 少々は構いませんが、斜めに切り込まないようにするのがキモです。  刃を押し込むように切っても切り口はシャープになりませんし結構波打っています。 刃を走らせてすっと切るのがコツです。

接木手順  次の手順


10,穂木をカット

 穂木を取ります。 割り接ぎですので、苗箱から直接切り取っても構いません。

接木手順  次の手順


11,穂木の整形


 穂木は子葉より上でカットして使います。 あまり足を長くすると、作業はしやすくても活着率は上がりません。

接木手順  次の手順


12,穂木を削る

 穂木の軸を「くさび形」に削ります。 削る角度は浅めにしないと、台木に挿したときに安定しませんし、活着もよくありません。 台木とふれあう面積を大きくするためにも、台木の切り込みは深めに・穂木は浅めに削る事を心掛けると上手く行きます。  この作業も、一発で形を作るようにするつもりでやります。 何度もやり直しているようではうまく接げません。 いじっているうちに穂木がシナシナになってしまうからです(手の熱かな?)

接木手順  次の手順


13,台木に挿す

 整形した穂木を台木に挿します。 この画像ですと、台木の切り込みや穂木を削った角度がイマイチで、このまま手を離すと外れてしまいます。  うまく接木をすると、切り込みに穂木を入れたところで吸い付くように止まっていますので、手を離しても大丈夫です。

接木手順  次の手順


14,クリップで固定

 穂木を挿したらすぐにクリップで固定します。画像に見えていくクリップは、接木フレンド・ウリ科用です。 ナス科用と比べてクリップの内径かバネの強さが若干違う感じです。 でも活着率は別に変わりなかったりしてね。  この画像は6〜13で見ていた画像に出ている物とは違う株の物です。 接木の株を撮影用にイジリまわっていたら、穂木がシナシナになってきたので、撮影に耐えなくなったのです。 接木作業は手早くしないとダメだという実例ですね。

接木手順  次の手順


15,固定後の姿

 台木と、接木後のナスの姿です。 接木の首が少々長いので見てくれが悪いですね。 もう少し短めに接いだ方が活着は良くなります。 穂木が長いと、どうしても慣性モーメントが大きくなって、接ぎ木部分に負担がかかります。  接木が済んだらすぐに移植です。 少し遮光して水をスプレーしておくと、少しの間なら持ちます。

接木手順  次の手順


16,鉢に移植

 移植するだけってもんですが。 定植作業で接ぎ木部分を痛めたり外したりすることは結構多いので要注意。 移植したらすぐに潅水します。 水道の水を一気にかけたりハス口で潅水するだけでも接ぎ木部分が外れたりすることもあるので、タンクから自然流水させて潅水しています。  接ぎ木部分を埋めてしまうと、自根が出る可能性があるので埋めないように。

接木手順  次の手順


17,遮光

 接ぎ木後はビニールでトンネルを掛けた温床の上にポットを並べ、黒の寒冷紗を掛けて(晴天時は2重に掛けて)遮光しています。  遮光は接木後4日目まで行い、その後は徐々に日光に当てて慣らしていきます。  この時にビニールを締め切っていると結構蒸してしまいますので、湿度の確保と適度な換気を(矛盾しているけど)心掛けて下さい。 遮光しないと・・・・たぶん穂木がもたないでしょう。

接木手順  こんで終わり


 わからないことがあったら、この資料を手に入れたNETで質問するように。


 以上である、各自健闘を祈り失敗を期待するぞ



使用機材
撮影には デジタルカメラ CASIO QV30
接写レンズ代わりに ミノルタ一眼レフSRT101のレンズ
HTMLの編集に NEC PC9821Xa
接木の実演と手の出演は、滋賀県立農業大学校平成9年度入学の北村君でした