知っておきたい野菜の生理生態


                       

 野菜の生育や花芽分化に大きくかかわる環境要因は、温度、土壌、肥料、水分、日照、日長などです。

 温度
 温度は生育と花芽分化に影響します。野菜が生育する適温は、品目や品種により異なります。露地栽培では、生育適温期間がどれだけあるかによって、タネまきや植えつけ時期が決まってきます。また、気温だけではなく、地温も生育を左右する重要な要素です。

 @春先や初夏は、気温、地温を上げるよう工夫する
 夏果菜類の早植えの限界は、平年並みの気温であれば5月上旬です。これより早める場合は、トンネルやマルチをするなどして気温や地温を上げてやります。その場合、日中は高温にならないよう換気が必要です。

 A低温に強い種類から植える
 夏果菜類でも下表のように、種類によって低温に耐える性質が異なります。例えば、カボチャ、トマトは先に、次いでキュウリ、スイカ、最後にナス、ピ−マン、オクラというように、低温に強いものから順に植えていきましょう。

主な野菜の生育適温と限界温度 (℃)
品 目最高気温適 温最低気温
トマト3020〜25
ナス3522〜3010
ピ−マン3521〜2715
キュウリ3518〜2512
スイカ3523〜28
オクラ3525〜3014
カボチャ3517〜23
イチゴ3017〜20
ホウレンソウ2515〜2010
ハクサイ2215〜20
レタス2515〜20
ダイコン3617〜23
ジャガイモ2918〜21
インゲン3015〜2510

 B秋冬野菜は生育の適温期間が短い
 夏果菜類は植えつけが多少遅れても気温が上がっていくので問題はありませんが、秋冬野菜は急激に低温期に向かっていきますので、タネまきや植えつけ適期の期間が非常に狭くなります。数日遅れるだけで一人前の大きさにならないこともありますし、早まきすると病害虫の被害が大きくなるので、自分の地域での適期をつかむことが大切です。

 C大苗で越冬すると寒害を受けやすい
 耐寒性の強い野菜でも大きく育っていると、寒害をうけやすくなります。エンドウ、ソラマメなどは早まきを避けましょう。

 土壌と水分
 生育を良好に保つためには、土の条件を改善して土中に微生物がたくさん生息するようにし、根を十分に張らすことです。そのためにも、有機物の施用と深耕による「土づくり」や、適正な酸度(pH)を保つことが大切です。
 土の水分が不足すると発芽不良や正常な生長が妨げられます。一方、水分過多は、根の伸長を抑制したり病害を助長するなど、やはり健全に生育しない原因となります。
 かん水は、植えつけのときにはたっぷりと、その後は土壌の性質や天候によって加減しながらやりましょう。低温期は午前中に行い、高温期では日中を避けて夕方にたっぷりやり、回数を減らします。水はけの悪いところでは、初めから堆肥などを投入して土壌改良しておくことや、高うねにしたり排水溝を手直しするなどして、排水を良くします。

 光
 光の強さは生長に、日長は花芽分化に関係します。強い光が必要な野菜は密植を避けたり、芽かきや整枝によって受光態勢を良くします。  また、うねを立てる方向によって光の受け方が違ってきます。普通は南北に立てるのが良いのですが、東西に立てる場合は、うねの南側半分が北側半分より生育が良くなるので、生育をそろえるために1条植えとします。さらに、1つのうねに生育の速さと草姿の異なる野菜を植える場合、南側に草丈が大きく、生育の速いものを植えると、北側に植えたものの生育が悪くなります。例えば、アブララナ科の野菜の場合、ブロッコリ−>キャベツ>ハクサイの順に丈が大きくなります。そこで、南側はキャベツ、ハクサイを、北側にはブロッコリ−を植えると、3品目とも良いものを穫ることができます。

光の強さと育ち方
光の条件野 菜 の 種 類
強い光が必要  ウリ類、ナス類、まめ類、いも類、(サトイモ以外)、ダイコン、スイ−トコ−ン
弱い光に比較的耐えられる ネギ類、アスパラガス、サトイモ、ショウガ、セルリ−、レタス
弱い光を好む  ミョウガ、ミツバ、フキ

 花芽の分化
 茎や葉が生長することを「栄養生長」、花芽ができて開花・結実することを「生殖生長」とよび、栄養、温度、日長といった条件が複雑に絡み合って栄養生長か生殖生長が決まります。したがって、つくりたい野菜が、どのような条件で花芽分化するのかを知って、品種選択や保温などの手だてを考えます。例えば、花芽分化して困る春まきのダイコン、カブでは、抽台しにくい品種を選んで無理な早まきをせず、トンネルやマルチなどで保温したり、大きくならないうちに収穫したりします。また、スイカ、マクワは肥料を多くやりすぎると花芽ができにくくなるので、元肥のやりすぎに注意しましょう。                                          

花芽分化を起こす要因と野菜の種類
要因条件野 菜 の 種 類
栄養過多・過小で障害ナス、トマト、トウガラシ
日長長日ホウレンソウ、シュンギク
日長短日イチゴ、シソ
温度低温:苗の大きさに関係なく種子からダイコン、カブ、ハクサイ、エンドウ、タイサイ、ミズナ
温度低温:一定の大きさになった中苗キャベツ、ブロッコリ−、セルリ−、ネギ、ニンジン、ゴボウ、イチゴ
温度高温レタス、エダマメ


 着果の促進
 キュウリは受粉しなくても果実が肥大しますが、その他の果菜類は受粉することが重要です。また、着果の良否は株の栄養状態にも左右されますし、ホルモン剤によって着果を促進したりできます。
 @人工交配する
 受粉は、風や昆虫などによって運ばれた花粉が雌しべにつくことによって起こります。特に、ウリ科の野菜の受粉は、花をめがけてやってくる昆虫がどれだけ活動するかによります。花が次々と咲くのに天候が悪いため訪花昆虫の活動が鈍いときは、人工交配するとよいでしょう。やり方は、花粉の発芽能力が高い午前7時〜9時ごろの涼しい時間帯に、雄花をとって雌花の柱頭にすりつけるようにして交配します。

 A着果ホルモンをかける
 低温期や高温期は、花粉の発芽能力がなくなったり低下したりします。トマトでは着果ホルモン剤(トマトト−ン)をかけてやると確実に着果します。濃度は、気温にあわせて50〜100倍で使います。やり方は、第1花房の3〜4花が咲いたとき、早朝、霧吹きで花に散布します。このとき、生長点にかかると生育異常になるので注意してください。

 B株の栄養状態を良くする
 トマト、スイカ、カボチャなどでは、肥料・水分過多で株が茂りすぎたり、逆に肥料不足で枝先やつる先に花が咲くようになると、着果しにくくなります。元肥を必要以上にやらず、着果を確認してから追肥したり、水はけをよくして根の張りを良くし、株が健全に保たれるようにします。