なす(トンネル栽培)
技術体系設定の前提条件                           
1.適応地域       平坦地域全域                    
2.圃場条件       日当たりよく、土壌水分が比較的多く、耕土の深い肥沃な土壌。粘質土でも十分栽培できるが有機質を施し土を膨軟にする。  
3.輪作体系       水稲→なす→水稲
4.目標収量       10t /10a
5.標準的な作業時間   1350時間 /10a
6.栽培技術のポイント
 (1)土壌病害対策と収量安定のため接ぎ木苗(購入)を利用。         
 (2)栽培期間が長いので水稲収穫後、堆肥投入、深耕など十分な土つくりを行う。
 (3)トンネルを利用し定植時の地温を確保、初期生育を促進する。
 (4)気温の低い5月末まではホルモン処理を行い、着果と肥大促進をはかる。
 (5)ミナミキイロアザミウマの防除対策を初期から講じておく。
 (6)整枝、追肥等の管理作業の徹底により長期収穫をはかる。
7.品種  品種名  千両2号(タキイ種苗)
           (台木 アカナス)
       解説   果型は、長卵で、形の整いよく、果色は濃黒紫色で、盛夏期でも夏ボケ果や成り休みが少ない。節間はやや長く、草勢は強く、果実の肥大は早い。長期栽培に向く。
作業内容







 

作業の種類

     技    術    内    容

土つくり



 

 水稲収穫後、直ちに石灰窒素を20kg/10a施し、耕運
し稲わらの腐熟化を進める。
 年内中に堆肥3tを施し深耕、畝立てし土の風化を促す。
 周囲に排水溝を設けほ場の乾田化をはかる。
 







 
 







































 

作業の種類

     技    術    内    容

施   肥



 

定植の1ヶ月前に苦土石灰、BM重焼燐、ケイフン、基肥を施
し、2m幅にうね立てを行う。待肥は、定植1週間前畝の上に
施し軽く土と混ぜ整地する。
 定植1週間前に植え穴を掘り、土が乾いていれば潅水し、ト
ンネル、マルチをかけ地温を高めておく。

施肥設計

















 

肥料設計例(kg/10a)

















 

肥 料 名
 

全量
 

基肥
 

待肥
 

 追肥
 

成 分 量

















 

堆   肥
乾燥ケイフン
苦土石灰
BM重焼燐
骨   粉
CDUたまご
BM有機1号
ロングNK
  180日
燐硝安加里
   S604

油カス
 

3000
500
150
 60
 40
100
 50
100


100

180
 

3000
500
150
 60
 40
100
 50
100





 











40


 











20*3回

90*2回
 


13


1
12
7
20


16

9
 


15

14
8
12
5



10

5
 


3



12
6
13


14

2
 

定植準備









 

支柱材料 仮支柱 長さ60cm(1株1本)750本
     本支柱 杭 長さ2.4m     200本
     鉄 線 14番線 2段張り 約1200m
トンネル  弓   180cm     1800本
     ビニール 幅180cm(0.05mm) 600m
マルチ  黒色ポリ 幅180cm     600m
寒冷紗       幅210cm     150m
     支 柱  長さ2.4m      70本
潅水設備 潅水チューブ他一式       600m
苗準備  (畝幅200cm 株間65cm) 750本
 







































 





































 

作業の種類

     技    術    内    容

定   植







 

 定植時期は、4月中旬、地温12℃以上を確保する。
 750本/10a(本葉7〜8枚)の購入苗を準備する。
 定植作業は晴天無風の暖かい日を選んで行う。
 ミナミキイロアザミウマ防除に植え穴にアドマイヤー粒剤を1株当たり1〜
2g施用し土と軽く混ぜる。
 植え付けは、浅植えとし深植えとならないように気をつけ、
潅水は土を落ち着ける程度に少量行う。
 1畝が植え付け終えれば仮支柱を立てトンネルをかける。
 夕方は早めに定植を終了し、トンネルを閉め保温に努める。

定植直後の
    管理

      
 

 不必要な潅水は地温を下げるため慎む。乾く場合は、晴天の
午前中に潅水を行う。
 晩霜に気をつけ、霜が予想される場合は、コモかけをする。
 マルチをしていると、トンネル内が高温乾燥となり葉焼け等
の障害を起こし易いので温度管理に特に気をつける。

トンネル管理











 

 生育適温は25℃。日中35℃以上にならないようにトンネ
ルの裾をあけて換気する。夜温は10℃を確保できるよう努め
る。
 花が咲き始めると35℃以上の高温や17℃以下低温は授精
障害を起こす。
 トンネル除去前、5〜7日より徐々に外気にならして、夜露
直射日光に当てるようにする。
 トンネル被覆は、5月20日頃までを標準とするが、トンネ
ル内に茎葉がいっぱいになり、夜温が12℃以上あれば取る。
 換気を始めるとトンネル内が乾燥するので天気の良い日を選
で潅水する。
 トンネル除去後、1番花の直下から出る2本の側枝を残し、
それ以下から出る側枝と台木からでる腋芽は早めに摘除する。

ホルモン処理



 

 トンネル被覆期間中、被覆していても低温となり着果不良や
石ナスとなる。これらを防止するためホルモン処理を行う。
 単花処理は、開花当日の花にホルモン剤(トマトトーン)を
スプレーで噴霧する。
 





































 
 
 



































 

作業の種類

     技    術    内    容

ホルモン処理







 

重複処理は不良果となるのでホルモン液に食紅で色をつける。


 
処理時期  濃  度

 
 4月
 5月
 30〜40倍
 40〜50倍
(注)低温の場合、濃いめで使用する。
 ホルモン処理、4〜5日後に灰色かび病の予防と着色不良防
止のため花弁ぬきを行う。
 単花処理は果実の肥大促進効果が高いので労力がゆるすかぎ
り行うとよい。

ミナミキイロアザミウマ
被害回避対策

 トンネル除去後、風害軽減とミナミキイロアザミウマやアブラムシの被害回
避のため白色寒冷紗(高さ2m)をほ場の周囲に張る。

排水対策

 

 1番果収穫終了時、樹勢をみながら油かすをうね肩に追肥す
る。同時に、排水対策のため、通路の土を畝肩に切り上げ高畝
にする。

敷わら
 

梅雨明け後は、マルチ上に敷わらを行うと地温の上昇が抑えら
れる。

支柱立て
 

本支柱は、5.5mの直管パイプをU字に曲げ加工したものか
鋼管パイプを組み合わせて立てる。

整枝・誘引



 

 主枝には、1番花直下に残しておいた2枝と1番花上位から
発生する強い枝を残し4本仕立てとする。
 側枝が伸びると、枝が折れないようまたキズ果防止のため順
次誘引をする。主枝は、左右に2本ずつ1株に4本とし、枝の
間隔が25〜30cmとなるように最終配置する。

せん定


 

 下葉の黄色くなった古葉や採光を妨げる大きな葉は、順次摘
葉する。また、株のふところ(内側)に出てくる徒長枝や葉は
放任すると通風、採光を悪くするので整理する。
 



































 
 
 
 
 






































 

作業の種類

     技    術    内    容

潅  水



 

 初期はチューブ潅水により生育ムラのないようにする。また
梅雨明け後の高温乾燥期では、3〜4日間隔で畝間潅水を行い
生育不良による収量減やツヤなし果の発生を防止する。
潅水の時間帯は、夕方か早朝に行うのが作業上からも生理上か
らも望ましい。

生育診断と
    追肥











 

 開花位置が先端に近づき中花柱花が増えれば、追肥を行う。
追肥量は1回N成分で3〜4kgとする。
ナスの生育診断は、主に花の形態と開花位置により行うことが
できる。





 

 
 
 

 生育良好な場合

生育が悪い場合









 

長花柱花となり
濃い紫色で花も
大きい。

短花柱花となり
花の色も薄く貧
弱。
開花位置から先
に4〜5枚の展
開葉がある。
 
開花位置から先
に1〜2枚の展
開葉しかない。
 

病害虫防除













 

灰色かび病  スミレックス水    1000〜2000倍
       ポリオキシンAL乳  500倍
うどんこ病  トリフミン水     3000〜5000倍
       モレスタン水     2000〜3000倍
褐色円星病  ジマンダイセン水   400〜600倍
       ダコニール水     1000倍
綿疫病    銅水和剤
褐斑細菌病
ミナミキイロアザミウマ アドマイヤー粒    1〜2g/株 定植時
       アドマイヤー水    2000倍
       アグロスリン乳    1000倍
       ボルスタール乳    1500〜2000倍
アブラムシ  DDVP乳      1000倍
       アリルメート乳    1000倍
 






































 














 

作業の種類

     技    術    内    容

病害虫防除




 

ダニ     ニッソラン水    1000倍
       オサダン水     1000倍
チャノホコリダニ  アプロード水    1000倍
ハスモンヨトウ   エルサン乳     1000倍
テントウムシダマシ  ディプテレックス乳 1000倍
 

収   穫



 

定植後30日程度で収穫が始まる。1果重量が80〜100g
程度で収穫するが、初期は早めに収穫し生育促進をはかる。着
果から収穫までの期間は、20〜25日位が果皮も柔らかく良
質である。