春だいこん
 
1. 必要な施設条件
(1) ほ場条件
  耕土が深く排水のよい肥沃な土で、砂〜砂壌土が望ま
 しい。
(2) 設備条件
  パイプハウス
 
2. 品種例
   天宝
  極晩抽性の青首総太りだいこんで、どの作型にも播種できる。生食、加工の両方に向き、市場性が高い。
  栽培面では、根長の長短があり、4月収穫では空洞果が発生するなど、栽培はやや難しい。
 
3. 作付け体系
  ほうれんそう、みぶな、ヒノナ等の軟弱野菜を組み合わせた年3輪作型
 
4. 目標収量 8,500kg〜9,000/1,000u
       Lサイズ中心出荷
 
5. 栽培のポイント
  だいこん十耕といわれるように、耕土を深く耕し、早めにマルチを張り、地温確保につとめる。
  生育前半は厳寒期にあたり、寒害を受けやすく、生育後期は気温の上昇により、抽たいが促進されるので、品種や生育ステージに併せて、適切な温度管理を行う。
  間引きの励行と適期収穫につとめ良品生産を目指す。
 
6. 技術内容
(1) 土づくり
  早めに完熟堆肥を入れように心がける。耕盤が形成されると排水不良による湿害や変形につながるので深耕ロータリで深く耕耘する。
  ダイコンの最適pHは6.0〜6.8。
  ほうれんそうの後作でpHが高い場合は石灰資材を控えるか、硫酸カルシウム(エスカル)のような酸性で緩効性の石灰資材を使用するとよい。
(2) 本ほの準備
@ 施肥 (基準 作型2)         
  茎葉が過繁茂になりすぎず、生育後期に肥切れしないような肥効にする。
  また、青首ダイコンはK吸収が強く、生育後半にK欠乏にならないにする。
 
  施肥設計例        (kg/1,000u)

肥 料 名

 成分量

 施肥量

完熟堆肥
有機石灰
緩効性被覆肥料
化成肥料
 

   
   
16-10-14
10ー10ー10
 

 2,000
  200
  40(30)
 120(80)
 
  注)※は作型1,3の場合に施肥量を調整
 
A マルチがけ
  畝立て1週間前には十分灌水を行い、土壌 水分確保 しておく。
  耕うん後、早めにマルチがけを行い地温を上げておく。 天宝ダイコンでは、地温確保と排水を考慮して、できるだけ高畝(20cm)栽培にし、品質を揃えるため、2条植えが望ましい。          
 
B 栽植密度
  生育の揃いを良くするため1,000u当たり9,000本を目安にする。ハウスの大きさと栽植密度は次のとおり。
(ア)畝立例(間口5.4m、2条播きの場合)
        
(イ)播種間隔例
 
(ウ)ハウスサイズと栽植密度

間口

株間×条間

条数

本/1000u

マルチサイズ

5.4m
6.0m

24cm×28cm
ちどり

12
14

約9,200本
約9,600本

穴あき2条
黒か緑0.03ミリ

5.4m
6.0m
 

28cm×28cm
ちどり
 

14
15
 

約9,200本
約8,900本
 

穴あき3〜4条
黒か緑0.03ミリ
 
 
(3) 播種
  播種は1穴に3粒(1,000u当たり4dl必要)とし、マルチ穴の中央に手まきする。播種と同時に指先で土を軽くかけてけておく。
 
(4) 間引き
  本葉5〜6枚目になったら1穴1本に間引く。大きくなりすぎたら、残す株の根が痛むので、引き抜かず土際から切り取る。間引き後灌水により抜き穴を埋めておく。
 
(5) 水管理
  播種10日前にしっかりと頭上灌水で水をうち、土壌水分を均一にする。は種後ジョロ先で手灌水を行う。発芽の揃いが悪かったらもう一度行うとよい。
  2度目は、特にほ場の乾燥が気にならなければ、間引き後に灌水を行う。次に、根径が10円玉大になったら、一度灌水する。以後収穫までに1〜2回畝間灌水する。
  収穫時に乾きすぎていると収穫しにいので、前もって灌水しておくと良い。
 
(6) 温度管理
  生育初期は保温に努め、中後期は25〜30℃以上になら ないように換気を行い、茎葉の過繁茂を防ぐ。播種から本葉8枚目までは十分保温し、厳寒期はべたがけ資材で 畝被覆する。生育中期は換気に努め、ただし、作型1の11月まきでは肩こけの恐れがあるので保温する。
  作型3では、後半が高温期になるので、できるだけハ ウス天井の被覆を除去し(4月以降)、抽たい防止と良品生産につとめる。
 
(7) 病害虫防除 
  比較的病害虫の発生しにくい時期であるが、連作による土壌病害(亀裂褐変症など)の発生もあり、発生初期の散布と予防散布に心がける。
  薬剤散布は滋賀県病害虫雑草防除基準に基づく。
(8) 収穫
  播種後120日を目安に、根長35〜40cm、根重1〜1.2kgのLサイズ中心に適期収穫を行う。総引きを原則とする。 収穫はハウス温度、品温が上昇しない間に済ませ、下葉とり、洗浄を行う。水切り後、根長を揃え、1箱10kgに箱詰めする。     
  4月に入ってからの収穫は高温になり、表皮の損傷がおきやすく、収穫遅れはス入り等の品質の悪化を招くので注意する。     
 
(9) 出荷調整作業の効率化
@ 大根調整機の導入
  大根調整機(ダイコンアジャスタ)はひげ根とり、根 切り、葉切り作業を1台で同時に行うため、これまでの一連の手作業に導入すれば作業の効率化が図られ、疲労軽減効果も期待できる優れものである。
 
(ア)作業の流れ
 
 
(イ)導入による効果
  大根調整機導入による効果は労働時間の短縮(雇用費の軽減)、作業者の疲労軽減があげられ、夫婦2人の労働力でも効率的に作業が進められる。
  作付面積20a以上で経済効果があり、さらなる面積拡大が可能となる。
                    (伊吹 久美)