少量土壌培地耕 抑制キュウリ
 
 
1. 品種例 
  穂木:アンコール10、アルファー節成、なおよし
  台木:スーパー雲竜、パワーひかり、エキサイト一輝
 
2. 目標収量
  1株当たり50本、可販収量 8,000kg/1,000u
 
3. 栽培のポイント
  土耕栽培と比べて、空気中の湿度が低くなりやすいので注意する。
  半促成栽培とは異なり、側枝の発生は良く生育初期は強い整枝もできるが、一旦生育が劣ると回復が困難なので注意する。
 
4. 技術内容
(1) 育苗
  育苗は、ポット苗育苗を基本とする。
 
@ 播種用土
  基本的に市販の培土を用いる。自作する場合は、病害虫の心配がなく、水管理のしやすい培土(川砂、ピートモス、バーミキュライト混合)とし、肥料は入れずに液肥等で対応する。
 
A たねまき
  育苗箱は、底面を水平に設置し、生育にむらが生じな いようにする。条間隔は、穂木で7cm、台木で9cm程度とする。7〜8mm程度の深さの播種溝を作る。穂木は2.5cm、台木は 3.0cm間隔に播種する。
 この作型では徒長しやすいので、やゝ播種間隔を広げる。
  穂木と台木を同日は種してよい。
 
B 鉢度
  用土は、病害虫の心配のない土壌で、保水性、排水性が良く、肥沃な土壌を用いる。孔隙率は70%位が良い。
  化成肥料は多すぎると、濃度障害を起こすので、控えめにして液肥で追肥を行うか、IB化成などで緩やかに 効かすようにする。この時期では、苗の生育が早く、若苗で定植されるため、半促成裁倍の半量程度の肥料成分で良い。
 
C 接ぎ木
  少量土壌培地耕では培地の消毒が容易で、自根栽培も 可能であるが、ブルームレス化および樹勢の維持のため に接木が必要である。
  通常は呼び接ぎを行う。高温期の接ぎ木のため、蒸散 が 多くしおれやすいため、気温、日射量の下がってい く午後に行い、遮光シートを用いる。
  交互誘引を行うため株元が地際と接しやすいので、自 根が生じないようやや高めの位置で接ぎ木を行う。
  穂木の胚軸の切断をしやすくするように、穂木と台木 を2cm程度離して植える。
 
(2) 本ぽ準備
@ 栽培床(培地)の準備
  培地は野菜が作付けできる土壌であれば、種類は問わない。しかし、排水を良くするため、細かすぎない方が良い。新たに使用する土壌はあらかじめ消毒しておく。 培地が乾燥しすぎているときは定植2〜3日前からか ん水し、適湿にする。
  2作目以降、培地を耕起する必要はないが、耕起する場合、細土しすぎない方が良い。
 
A 栽植密度
  株間は、側枝2節摘心栽培では60cm、側枝伸長栽培では、80cm程度とし、2条千鳥に定植する。
 
B 定植法
  定植は播種後25日、本葉3〜3.5 枚の苗を用いる。
  2条千鳥に定植し、交互誘引する。
  定植後は活着を促すため手灌水を行い、培地間の空隙をなくす。
  灌水チューブでの灌水は、定植直後では灌水むらを生じるため避ける。
  2作目以降は前作の株と株の間に定植する。苗の大きさ分だけポーラスカップなどで穴をあけ、定植する。
 

   栽培ベッド
 
(3) 培養液
@ 培養液の種類
  山崎処方キュウリ用1単位(原水が水道水の場合、EC値2.2〜2.3ms/cm)を標準とする。山崎処方は大塚ハウ ス2号をA液、大塚ハウス3、5、6、7,号をB液とする。 濃い濃度でA、B液を混ぜると沈殿するので注意する。 原液を作る場合 100倍までとする。その他、大塚A処方(大塚ハウス1、2号)の利用があげられるが、窒素濃度が高いことやpHの低いこと、カリウムの欠乏症状が見られることがあるので注意する(次表)。
 
A 培養液の給液
  定植後1週間程度は、1日1〜2回程度与え、株当たり0.5リットル 程度与える。その後、生育に応じて給液回数を増やすが、この作型は生育が速いので早めに増やす。
  最盛期で1日6回に分けて、株当たり2〜2.5リットル 程度与える。給液は、高温期には午前中重視、低温期には日中を重視する。
  培地内を安定化させるため、排液が3割程度あるように給液量を設定する。
 
   キュウリ用100倍原液のつくり方

処方      肥 料 の 種 類  原液1リットル 当たり

山崎処方     A液 大塚2号    83g
キュウリ1単位  B液 大塚3号    61g
               5号     5g
               6号   50g
              7号   12g

 大塚A処方  A液 大塚1号   150g
1単位     B液 大塚2号   100g

 
B 培養液管理
  定植後1週間までは水のみを給液し、その後は山崎処方1単位(EC値2.2〜2.3 mS/cm)を給液する。
  収穫中後期は培地内に十分肥料が蓄積していると考えられ、施用濃度を0.8単位(EC値2.0mS/cm)程度に下げることができる。
 
C 培養液循環施用
  給液タンクの容量が大きいと、タンク内の培養液の成分バランスの乱れが大きくなるため、1日にタンク内の培養液がなくなる量分のタンクにする。1作終了時には必ず液を交換する。
  循環当初はタンク内に土壌が戻ってくるため布きれなどで防ぐ。灌水チューブの末端に土壌が詰まることがあるので、詰まった場合は灌水チューブを洗浄する。
  培養液の給液量が少ないと培地内の土壌のEC値が極度にあがる場合があるので、この場合、水で培地を洗い流す。
  養液コントローラーで養液濃度を管理する場合、原液タンクから給液するチューブが藻の発生などで詰まることがあるので、原液タンクの培養液濃度を10倍程度にして、コントローラーが頻繁に動くようにする。
 
D 除塩対策
  栽培終了2週間前から、水のみを補充して栽培を続けることで、培地内の余剰肥料成分を無駄なく利用でき、培地内の除塩ができる。
  排液EC値が原水とほぼ同じにする。除塩をせずに次作を栽培すると生育障害が起こるので注意する。
 
(4) 本ぽ管理
@ 温度管理
  室温は昼間25〜28℃を目標として換気を行い、夜温が15℃以上であれば、夜間もビニールは開放する。
  11月にはいると夜温が10℃を低下するため、二層カ−テン被覆を行う。
 
A 誘引、整枝
  主枝の下位5節までの側枝と雌花は除去する。側枝は原則として2節で摘心する。主枝は18〜20節で摘心する。 整枝、誘引作業は早めに分割して行う。 
  一気に強い整枝を行うと、側枝の発生が劣ることがあるが、半促成栽培ほどではない。勢いのある側枝を1〜2本程度残しながら整枝を行う。
 
B 摘葉
  採光と風通しを図るため、老化した葉や、側枝の受光を妨げいている葉は早めに除去する。摘葉は1回に3枚までとする。
 
(5) 病害虫防除
@ ベト病
  20〜24℃で、多湿条件下で発生しやすい。肥料不足などで、草勢が衰えると蔓延する。薬剤の防除は予防または発生初期に行うようにし、雨などの発生しやすい条件では早期に防除する。病原菌は葉裏から進入するため、むらのないように散布する。
  同一系殺菌剤の連用は耐性菌の発生を促すため、ローテーション散布する。
 
A 灰色カビ病
  20℃前後の比較的低温時に発生することが多い、加湿条件下で発生することが多いため、換気を励行し、湿度を下げる。
 
B うどんこ病
  気温が28℃前後で、湿度が比較的低い50〜80%の時に発生しやすい。年間通じて被害が認められる。光線量が不足すると発生が助長される。
  発病初期では防除が容易であるが、蔓延すると防除しにくい。特に加温する場合、湿度が低くなり、発生しやすい。少量土壌培地耕では、ハウス内の湿度が低くなりやすく、発生しやすいので注意する。
 
C アブラムシ
  アブラムシはモザイク病などのウイルス病を媒介するため、対策は重要である。ハウス内は増殖に適しているので、発生が確認されたらすぐに防除を行う。
  薬剤抵抗性の回避のため、必ず系列の異なる薬剤のローテーション散布を行う。
 
(6) 主な生理障害
@ 曲がり果
  物理的な要因が多いが、生理的な場合もある。日射量、温度、水分、肥料などの要因により起こり、要因が複合することでさらにひどくなる。
 
A 先細り果
  受精障害が主な要因である。日射、肥料、土壌水分などにより障害が助長される。過繁茂の場合にも発生する。
 
(濱中 正人)