抑制キュウリ
 
 
1. 品種例
  穂木:アンコール10、アルファ節成、なおよし
  台木:スーパー雲竜、ひかりパワー、エキサイト一輝 等
     (ブルームレス台木)
 
2. 目標収量   8,000kg/1,000u
 
3. 栽培のポイント
(1) 抑制栽培では高温期のは種のため、温度管理、水管理に注意する。また、第1回目の追肥が早すぎると流れ果が増加するので、施肥タイミングを外さないようにする。
 
(2) 生育初中期(高温期)の換気と、生育後期(低温期)の保温・加温を遅れないように行い、樹勢維持に努める。
 
4. 技術内容
(1) 育苗
  キュウリの発芽適温は28〜30℃、嫌光性で暗所での発芽が早い。発芽時には種子重と同じくらいの水分を吸収するので、乾燥しないように注意する。
@ は種床の準備
  は種床土は、水管理のしやすい土(川砂、ピートモス、 バーミキュライトを混合する)とする。肥料は入れずに、 液肥等で対応する。
A 種子量
  穂木、台木とも揃った良苗を確保するために、植付け予定本数の2割増分を用意する(1,800粒/1,000u)。
B は種
  播種時期は7月中旬〜8月上旬まで。高温期の育苗となるため、換気が十分可能なハウスで行う。
  この時期はアブラムシなどの害虫の飛来が多いので、ハウスサイド面に寒冷紗を張り、害虫の侵入を防ぐ。
  は種はトロ箱などを利用し、穂木は5〜6cm×2〜3cm、台木は6cm×3〜4cm間隔の条まきとする。台木は穂木と同日または1日後には種する。
  は種後は十分にかん水し、新聞紙で覆って乾燥を防ぐ。 発芽後すぐに新聞紙を取り除く。
C は種床管理
  発芽までは昼夜とも27℃前後に保つが、発芽後は土壌水分を控え、茎を太く育てる。接木前はかん水量を抑え、固めの苗にしておく。
D 鉢土の準備
  鉢土には、膨軟で通気性と水もちが良く、病害虫の心配の無い物を用いる。土壌消毒を行う場合は使用する2週間前までに行い、充分にガス抜きをしておく。
<例> 田土       :500リットル
    完熟堆肥     :500リットル
    苦土石灰     :1kg
    過燐酸石灰    :1kg
    化成肥料(868):1kg
E 接ぎ木
  穂木の本葉出始め(本葉の大きさが500円硬貨程度、は種後7〜8日)、台木の子葉展開時に呼接ぎを行う。
  作業は風の通らない、涼しい日陰で行う。
  台木は根ごと掘り上げ、竹ばしを削ったヘラなどで幼芽を除去し、35〜40度の角度で胚軸の約 1/2切り下げる。
  穂木は子葉の1cm下を25〜30度で約 2/3切り上げる。 切り込み部分が完全に接着するように差し込み、接合部をクリップでとめる。クリップは誘引が終了するまで 外さない。
  穂木の胚軸は切り離しやすいように台木の胚軸と離して、直ちに12cm鉢に鉢上げする。
  鉢上げ後、寒冷紗などで日除けし、噴霧器などで湿度を上げる。この時期は気温が高いので、アルミ蒸着フィルムなどで遮光し、蒸込まないように注意する。
  接木後2日間は遮光し、温度(27℃程度)、湿度を維持し活着を促す。3日目は日中の高温期のみ遮光し、徐々に日光に慣らしていく。4〜5日目から徒長しないよ うに通常の管理に徐々に戻していく。
  接木後7〜10日後に、10本程度の穂木の胚軸をつぶし、その翌日の萎れ加減を見て胚軸の切断を行う。
  胚軸の切断は穂木と土が接触しないようにできるだけ上部で切断する。
 
F 育苗管理
  胚軸の切断後、活着を見て鉢ずらしを行い、日光によく当てる。日中葉がしおれるようなら遮光を行う。
  温度管理は活着後は昼間24〜28℃、夜温12〜15℃を目標に換気に努める。
  この時期に高夜温が続くと主枝の雌花率が低下する。かん水は抑え、茎の太い苗づくりに心がける。
  育苗日数は播種から25日前後とする。
 
(2) 本ぽ準備
  台木の根は酸素要求量が高く、浅根性なので、有機質を多く含み通気性、保水性の良い土づくりを心がける。
  堆肥、土壌改良剤は定植1カ月前に全層に施用して、よく耕耘しておく。高度化成肥料は定植7〜10日前までに施用する。
@施肥例              (kg/1,000u)

肥 料 名

成 分

基 肥

待 肥

追 肥

熟 成 堆 肥

   

3,000

 

 

苦 土 石 灰 

    

 100

 

 

BMようりん

0-20-0

  40

 

 

CDU化成

12-12-12

  70

 

 

速効性化成肥料

16-10-14

  20

 30

20×3回

液肥

10-4-8

   

 

24×6回

(N-P5−O)
 


 

16-21-15
 


 


 
 
※ 苦土石灰、BMようりんは土壌状態により適宜調整する。
 
A 畝幅及び株間
  畝幅180cm、株間70cm、2条千鳥植、
  1,000u当たり1,500株程度とする。
 
 
(3) 定植
  定植は、本葉3〜3.5枚(は種後25日)の苗を用いる。 ほ場は定植前日に充分かん水しておく。根鉢を崩さないように注意し、鉢土が 2/3隠れる程度の浅植えにする。深植えすると穂木の自根を発生することがある。
  定植後は充分かん水し、ほ場の土と良くなじませる。
 
(4) 温度管理
  キュウリの生育適温は昼間20〜25℃、夜間13〜18℃である。光合成は午前中に約70%を行うので、午前中は25〜30℃、午後は20〜25℃を目安に換気する。
  夜温のうち、前夜半は光合成産物の転流が行われるので15℃前後とする。夜半以降は低温にして呼吸による消耗を抑える。
  生育前半に高夜温が続くと、主枝の雌花着生率が悪くなるので換気等の対策をとる。
  カーテン被覆は10月下旬頃から始める。
  加温開始はハウス外の夜温が10℃を下回る頃とし、11 月上〜下旬を目安にする。温度設定は夜温で12〜13℃とする。この時期はいったん樹勢が衰えると回復が遅く、収量に影響するので加温は遅れないようにする。
 
(5) かん水
  定植後、活着までは少量ずつの細かなかん水を行い、活着を促進させる。活着後は徒長させないようにかん水量を減らし、根の張りを良くする。
  主枝の着果・肥大期から水分要求量が多くなるので、徐々に増やす。かん水は天候や土壌の湿り具合により調整するが、乾湿の差が大きくならないように注意する。
  低温期になるとかん水は地温の低下、夜間の過湿につながるので、好天日の午前中に行う。
 
(6) 誘引・摘芯
  本葉7〜8枚頃に親づるの誘引を行う。主枝の下位5節までの側枝と雌花は除去する。
  側枝は1〜2節で摘心し、混み合わない程度に行う。 樹勢維持のため、常に2〜3の上向きの生長点を残すように心がける。主枝の摘芯は18節前後を目安に行う。
 
(7) 追肥
  キュウリの養水分吸収は収穫開始前頃から急速に増加する。また、この時期は栄養生長と生殖生長が同時に進行するため、草勢の維持と収量確保のための追肥は遅れないようにする。
  1回目の追肥は親づるの果実着果肥大を確認してから、N成分で1〜2kgを液肥で施用する。早すぎると流れ果が多くなるので注意する。
  その後は収穫量に応じて施肥するが、1回の追肥はN成分で2kg程度までとし、施肥の間隔で調整する。
 
(8) 摘葉
  採光と風通しを図るため、老化した葉や側枝の受光を妨げている葉を早めに除去する。
  摘葉は1回につき3枚まで(上・中・下段)とする。
 
(9) 収穫
  播種後40〜45日で収穫開始となる。開花後8〜10日ぐらいの若採りに心がける。気温が高い時間帯の収穫は品質が著しく低下するので、午前中に収穫する。
 
(10)生理障害とその対策
@ 曲がり果:巻きひげとの接触など機械的な刺激によるほか、株の老化や栄養状態、水分状態、通風、日照条件の悪化などでも生じる。肥培管理や受光態勢を維持する。
 
A 肩こけ果:低夜温やチッ素過多で生じる。また、栄養条件の悪化でも生じる。
 
B 尻細り:栄養条件の悪化や高温・乾燥、受精障害によって生じる。
 
C 尻太り:樹勢が落ちたときや、栄養不良(カリ欠乏)によって生じる。
 
(11)病害虫防除
  県病害虫防除基準に基づき、初期防除に心がける。
 
@ ベト病:10月頃に曇天無風の日が続くと蔓延する。生育後期の肥切れや成り疲れの時に多発するので、換気と 肥培管理に注意する。
 
A 灰色カビ病・菌核病:気温の低下する秋頃から発生し、果実に被害を及ぼす。低温・過湿が重なると発生する。罹病果実や開花後の花弁からも伝染するので早めに除去する。薬剤の使用にあったては、薬剤間の交差抵抗性があるのでローテーション使用を励行する。
 
B うどんこ病:高温乾燥条件で発生する。育苗期から予防防除を行い、発生初期の防除を徹底する。耐性菌が発達しないように薬剤のローテーションを行う。
 
C モザイク病:アブラムシを介して伝染するので、防虫ネットなどで侵入を阻止する。
 
D その他害虫:ハウス周辺からの飛び込みが原因となるので、ハウス側面に寒冷紗等を張る(ウリノメイガ等)。
  アザミウマ類、アブラムシ類防除に定植時に粒剤を施用する。 
             (高澤 卓弥、森野 洋二郎)